『入浴福祉新聞 第17号』(昭和61(1986)年12月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
『地域福祉とボランティア』
兵庫県赤穂市入浴ボランティア「しゃぼん」 会員 川端 良子
私は昭和55年に民生児童委員の委嘱を受けました。
当初、民生委員の役割も何も知りませんでしたが、社会福祉全般にかかわる調査や情報の提供、相談など、地域にとってきわめて重大な責務を負っていることを知り、頑張らなければ、と決意しました。
民生委員になるまでは、妻、母として家庭中心に生活してきた私です。
井の中の蛙で何の知識もなく、視野のせまい主婦であることを痛感し、福祉関係の行事や講演などへ積極的に参加することにしました。
そのなかで、人々とのふれあいを通じて自分自身を見つめ直すことができ、これからの高齢化社会は、皆が一緒になって支え合う必要があることを学びました。
そして、私に実践できることがあれば…と思い入浴介護のボランティアに飛び込んだのです。
始めて訪問した先は、82歳で2年2ヵ月もお風呂に入っていないおばあさまでした。
裸にすると、震えながら手を動かして何かを求める仕草をします。
手を持ってあげると「イタイ、イタイ」と不安な気持を訴えます。
それまで何度となく実習を積み重ねてきたのですが、本番となると緊張の連続でした。
しかし、ミスもなく無事終了すると、おばあさまは「ええ気持やった。お茶!」と美味しそうに呑み、初体験の私たち一同は頭を見合わせてニッコリと喜びあいました。
また、あるおばあさまは、お風呂からあがると泣いていました。
ちょっと心配になって訊くと「皆さんのおかげでいいお風呂に入れてもらって…考えられんことや…本当にありがとう…」。嬉し泣きだったのです。
暑い日も寒い季節も、入浴は心の底から安らぎを与えてくれます。高齢者の喜びが自分の歓喜となり、ちょっとした手助けが相手に大きな感動を与えていることを知る今日この頃です。
福祉の心とは、共に生きる住民主体の住み良い街づくりだと思います。
そしてボランティア活動とは、決して背伸びをせず身近なところで参加してゆくことだと考えます。
私たちのそうした自然な活動が、次の世代の子どもたちを心豊かに育てることにもなるでしょう。
これからも地域福祉、在宅福祉の推進をはかるため、地道な努力をしてゆくつもりです。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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